「因」

 「因」というのは、原義としては「〜を原因として」「〜によって」と理解する。これは古典でも現代中国語でもほぼ変わらない。

 「因風」というと「風が原因で」「風によって」と理解すればいい。

 宋・司馬光「初夏」

  更無柳絮因風起  更に柳絮の風に因りて起こる無し

  惟有葵花向日傾  惟だ葵花の日に向かいて傾く有るのみ

 

 初夏なので、晩春の風物である柳絮が風によって巻き起こることもなく、ただ向日葵が太陽に向かって傾くだけだ、という意。


 宋・陸游「得趙若川書因寄」

  老病閉門誰省録  老病 門を閉じ 誰か省録せん

  因風時肯問如何  風に因りて時に如何と問うを肯(がえん)ず

 

 年老いて病気がちになり門を閉じておれば、誰が自分のことを憶えてくれようか、風の吹くによって時々はいかがですかと尋ねることを承知して下さい、の意。この2句は詩の末2句で、趙若川から手紙をもらいうれしいので、「年老いて引っ込んだ自分のことをあなただけは覚えてくれている、この上は風が吹くごとに挨拶の手紙をまた下さいね」、と詠んでいるということになる。